Petreanu et al. (2009)

2009.02.18(Wed)

Nature. 2009 Jan 18. [Epub ahead of print]
The subcellular organization of neocortical excitatory connections.
Petreanu L, Mao T, Sternson SM, Svoboda K.

「序盤で飛ばすとアトがつらくなりますよ」という内なる声は聞こえつつ。
なかなか単純明快な方法論だったのでうっかり感心し、連続更新です。
チャネルロドプシンによる光刺激を用いた、マウスのbarrel cortexの局所回路研究

ターゲットはbarrel cortexの第3層および第5層の錐体細胞(L3・L5A・L5B)
スライス標本を用いて電気記録を行なう。

これらの細胞への入力の候補は
・VPM(視床後内側腹側核)…顔面体性感覚の中継核
・L4(近隣の皮質の第4層のニューロン)
・L2/3(近隣の皮質の第2・3層のニューロン)
・M1(一次運動野)…ヒゲの運動情報
・POm(後内側核)…ヒゲの位置情報
この候補のいずれかに、シナプス前で発現するチャネルロドプシンを導入しておく。

で、実験としては、L3・L5A・L5Bの錐体細胞を電気記録しながら、格子状に決めたスライスの各点をピンポイントで光刺激していく。
たとえばVPMのニューロンにチャネルロドプシンを発現させた場合、そのニューロンが「つくる」シナプス(「受ける」ではない)に光があたると、シナプス前の脱分極が起こり伝達物質が放出される。
よってスライスの格子点を順に刺激していくと、VPMニューロンが記録中の錐体細胞につくるシナプスがそこにあったときだけ、記録細胞の電気変化が生じるハズ。

でさらに光刺激したときに記録している錐体細胞にみられた電気変化の大きさを、スライス上の各点に色としてのせてやると、単一の入力元からそのニューロンへの入力のマップ(sCRACM map)ができる。
こーいうのを「記録細胞ごと(L3・L5A・L5B)」「入力候補ごと(VPM・L4・L2/3・M1・POm)」でつくることで、barrel cortexにおける入力元ごとのシナプス位置の空間的分布を調べることができる。

で結果、錐体細胞の基底樹状突起および先頂樹状突起において、入力元ごとにシナプスがクラスターをつくっていることがわかった。
たとえば第3層の錐体への入力に関しては
・VPM→L3…基底樹状突起の下部
・L4→L3…基底樹状突起の中部と細胞体
・L2/3→L3…基底樹状突起の上部と先頂樹状突起の基部
・M1→L3…先頂樹状突起の尖端(L1)
・POm→L3…基底・先頂樹状突起の比較的広い領域
というように、段階的に分布していた。

まあこういう結果を絵なしで説明しても、なかなかエレガントさが伝わらないけど。
細胞体位置でそろえたマップの平均を入力元ごとでつくったFigure.2なんか綺麗。

こういうマップって見ていて楽しいし、データさえあれば解析自体はRでぱぱっとできそう。
(実際にやってる方、違ったらゴメンナサイ)
そりゃあ実験なんてデータとるのが一番めんどうで泥臭くて、誰もやりたがらないわけで。
解析だけなら楽しいなんてのは当たり前か…
しかし解析法が単純なのは良いことです。